幼馴染を見捨てた。

近所に住んでいた幼馴染がいた。

幼馴染は何もかも私より上で、私は幼馴染の子分、引き立て役だった。

高校の時、下校中にナンパされた。

ちょっと年上で悪そうな人たち。

カラオケに行こうと誘われ、幼馴染は付いて行こうとした。

私は本当に怖くて、逃げるように帰った。

幼馴染は残った。

ナンパしてきた人たちも、目当ては可愛い幼馴染で私はどうでもよかったんだと思う。

翌日幼馴染は、カラオケが楽しかった、オゴリだった、アドレス交換したと嬉しそうだった。

今思うと、大人の付き合いっぽいことをしてのぼせていたんだと思う。

それをきっかけに、幼馴染はずるずると素行が悪くなっていった。

学校にもだんだん来なくなっていった。


幼馴染がいない学校生活は、別にどうってことなかった。

それまで、幼馴染がいないと私は一人ぼっちで困るんだと思っていた。

けどそんなことなかった。

幼馴染がいないほうが楽なんだと気が付いてしまった。

そして幼馴染は駆け落ちして姿を消した。

幼馴染の両親が泣きながらうちに来て、心当たりがないかと聞かれた。

何も聞いていなかったので、そのように答えた。

聞こうとも関わろうともしてなかったので、本当に何も知らなかった。


それから10年以上も経った。

幼馴染の失踪から数年で幼馴染の両親は引っ越した。

近所にひそひそ噂をされることが辛かったのかもしれない。

うちの母親にまで話を聞こうとする人がいたぐらいだから。

ある日、自宅の郵便ポストを覗くと、私宛ての封書が入っていた。

宛名を見た途端に、それが幼馴染の書く字だと分かった。

封筒はダイレクトメールの封筒を再利用した物だった。

中身も便箋ではなく、雑に千切ったメモ帳か何かだった。

書いてあった文は、幼馴染の両親の安否と連絡先を尋ねるものだった。

幼馴染の、現在の連絡先も書いてあった。

字は走り書きのような乱雑さで、誤字をさっと線で消して書き直した跡もあった。

どう見ても、幼馴染が幸せで元気であるようには見えなかった。


その手紙をそのまま捨てた。

幼馴染の両親に連絡を取ろうと思えばできたと思う。

うちの母親と幼馴染の母親は年賀状のやり取りをしていたから。

幼馴染からの手紙はそれっきりで二度目はなかった。

時々今でも夢に見る。

もしかしたらあの時たまたま幼馴染が困ったいただけで、今は普通に生活してるかもしれない。

でも、どうしてもそう思えない。

多分あの時、私は幼馴染の命綱を切ったんだと思う。