とある年の夏に、俺の友達が死んだ。

突然の心筋梗塞で倒れたということだった。

本当に突然の事だったし、まだ歳も若かったので最初は冗談だと思ってしまった。

けど、それは冗談じゃなくて事実だと知らされたとき、ショックを受けた。

俺は新幹線の中で落ち込みながら地元に帰っていた。

「何でこんな時に死んだんだろう」とか「いいやつだったなぁ…」という気持ちでいっぱいになり、もっと地元に帰ってその友達と遊ばなかったことを後悔し始めていた。

実際、地元に帰って遊んだのは2回ほどだった。


葬式には彼の親族と高校時代の友達、会社の同僚と思われる人物が何人か参列してた。

勿論、そこには彼の嫁も。

しばらくして、ビールやら寿司を食べながら親族や友達との話し合いが始まりました。

ビールを飲んでも、全然酔える気にならなかった。

高校時代の友達と飲んでも楽しくなかったのはそれが初めてだった。

そんな時、とある友達がニヤリと笑いながら言った。

「ざまあみろだよな、○○のやつ」○○とは、死んだ友達の事だ。

なんでそんな風に言うんだろう。

俺は少しイラっとして、「そんな事言うなよ」と言おうとすると別の友達が言った。

「だよな、死んでくれてよかったわ」

意外だった。

彼らは死んだ友達と同じサッカー部の人たちだったし、高校時代は随分仲がよさそうだったのに

だから最初は何かの冗談だと思っていた。

だが、話を聞いているうちにそうでない事を知った。


実は中学の時からかなり嫌なやつで、金に汚いのは勿論、高校時代からは他人の女にはちょっかい出すわと評判が最悪だったことを知る。

人に対する嫌がらせは度を超えていたらしい。

それで火傷の跡が残ったやつがいたり、心に傷を負ったやつまでいたようだった。

更にもっといやらしいことに、そいつは自分がやったとばれないように、事故だったと思わせるようにやっていたという事だ。

俺はそんなやつだとも知らずに、今までいいやつだと思っていた自分が恥ずかしくなってきた


そして話を聞いていくうちに、どうやら俺もターゲットになっていた事を知る。

それは、高校時代に俺が好きだった人と無理矢理付き合ったという話だった。

正直、その当時はどうでもよかったと思っていた。

その時好きだった人は、結論から言えば死んだ友達の嫁だ。

けど最初から諦めていた。

可愛かったし、俺には手の届かない高嶺の花だと思っていたから。

けど、誰かに「好きな人誰?」と無理矢理聞かれて、そいつだと答えたのをその時思い出した。

多分、そのことを聞いて俺に嫌がらせをしようと思ったんだろう。

部活のマネージャーでもある彼女を無理矢理オトしたらしい。

残念なことに俺は最初から諦めていたからショックを受けるどころか、素直に彼らを祝福した。

その時、事の真相を知っていたのは彼の周りにいるほんの一握りの連中だけだったようだ。


愚痴、というか悪口を言っている二人は、その時はまるで部下と言うかパシリのように扱われており、自慢するかのようにいつもこんな話を聞かされていたらしい。

俺が知らないのも無理はない。

話の内容はいつもヤバい話のなので誰も広げようとしなかったようだ。

というか、話を広めたとして仕返しをされたらいやだということで、誰もが黙っていた。

俺はそんなやつを友達と思っていたなんて…。

そう思うと、今までもっと遊べばよかったと後悔していた自分が恥ずかしくなってきた。


更に俺は、結婚していた彼女が暴力を振るわれていた事を知る。結婚してから、ずっと

いわゆる暴力夫というやつで、彼女も「自分が悪いんだ」とすっかり思い込まされていた。

テレビでそんな事を見たことがあったが、まさか俺の身近で起こっていたなんて知らなかった。

しかも、昔自分が好きな人がそれを受けていただなんて。

正直、かなりショックだった。

それから数時間経つと、人数はかなり減っていた。

そんな時、棺を見つめる彼女の姿が目に映った。

彼女の目からは、涙がこぼれ出ていた。

俺はそんな彼女が哀れに思えて仕方なかった。

周りには誰もいなかったので、俺は声をかけた。

なんて声をかけたらいいかわからなかったから「通夜にこれなくてごめん」とだけ

そうすると彼女は俺に振り向き、「いいんだよ、別に」と答えてくれた。

その時に気付いた。彼女、少し笑ってる

俺はその時に、彼女が気が動転していると思った。

今思えば、思考回路が純粋すぎだ俺。

「夜風にでも当たって、少し気を落ち着けた方がいいよ」俺はなるべく優しく言った。

「ありがとう」と言われて彼女は立ち上がると俺に向かって「一緒に来て」と優しく囁いた。

その時、嫌な予感がした。すごく、嫌な予感が。


俺達は駐車場に出た。

屋上だったので夜風は気持ちいいだろうと考えたからだ。

屋上に出た瞬間に「ねえ、どうして彼が私と結婚したか知ってる?」と彼女が聞いてきた。

「さあ?…好き、だったから?」俺は素直に答えると、彼女は笑って答えた「そう大好きだったのよ……お金が」

やっぱり、俺の嫌な予感が的中した。

彼女は知っていたんだ。彼が酷い人間だということを。

死んだ友達は私の両親が金持ちだってこと知っていたらしい。

つまり、遺産目当て。親が死んでもよし、嫁が死んでもよし。

金が好きな彼にとって、最善の選択肢だったらしい。

だが結果、先に死んだのは彼だった。

「ざまあみろ」彼女の口から、その言葉を聞いた瞬間に、完全に彼を友達と思うことをやめた。

故人を責める気にはなれない。

だけど、「友達ごっこ」その時にやめた。


どうして俺にそんなことを言うのかと「私と付き合ってくれない?」という返事がとんできた。

「冷静になれって」俺はそんな言葉をかけるが、彼女は俺に対する気持ちをまげなかった。

今まで酷い男はたくさんみてきた。

彼も、彼の周りにいる人間もそうだった。

けど、俺は違った。

高校の時から優しくて、俺は周りの人間とは違うと言われた。

その時にはっきりと断ればよかったんだけど、俺は押しに弱く「分かった。けど、今はさすがに周りの目とかあるから」と言ってしまった。


結局、俺は彼女と付き合うことになった。

その関係は今でも続いてる。

彼女が今まで受けてきた暴力の跡は、もうない。


その後は、色々と黒い噂が流れた。

本当は彼は殺されたんじゃないかとか、彼女がやったとか、俺が嫉妬していたとかそんな噂が仕方ないことだとは思っていたが、そんな噂を聞くたびに彼女が時々ヒスになる事があった。

だから度々精神科に通っていた。

今となってはそんな噂流れていないが、それでも時々精神科に行く時がある。

もう感覚が狂っている俺には、あの時の葬式が修羅場だったのか、今が修羅場なのかわからない。