家に帰ってきたら、ストーカーがクローゼットに潜んでたことと、その数か月後に道歩いてたらそいつが降ってきたことが修羅場だった。

当時、二十歳の私は一人暮らしだったんだが、今考えればおかしいと思える事が立て続けに起こっていた。

具合が悪い時、マンションのドアノブ(外側)にポカリの入ったコンビニ袋が掛かっていたり。

鍵穴に何か詰まっていて鍵が差しにくかったり、ポストにくしゃくしゃのティッシュがたくさん入っていたり、などなど。

コンビニ袋は友達の誰かか彼氏だろう、鍵穴には埃かなんか入っちゃったんだろう、ティッシュはきつい言い方で追い返した新聞だか宗教の勧誘の腹いせかなあとあんまり深く考えてなかったんだけど。


ある日、仕事から帰ってきたら、部屋がなんかおかしい。

特に異常があるわけじゃないんだけど、なんか違和感を感じた。

よくよく見まわしたら、クローゼットがほんの少しだけ開いてた。

私は扉とかカーテンとか少しでも隙間があるのは嫌いで、いつもぴっちり閉めるのに。

朝、きちんと閉めなかったのかなって自分にいらっとしながら近づいたら、クローゼットの隙間から、人の目が見えた。


一瞬でぞわあって鳥肌が立って、すんごい悲鳴をあげた。

と同時にクローゼットから私の下着だけつけた男が飛び出してきて、とほぼ同時に

「どうした!?」

って当時の彼氏が部屋に飛び込んできた。

彼氏は一緒に帰ってきてたんだけど、コンビニに寄るから先帰っててって時間差だった。

びっくりしすぎたせいか、そこからちょっと記憶が飛んでるんだけど、彼氏は咄嗟に男を取り押さえて、悲鳴に驚いてやってきた同じマンションの住人が通報、私は

「隙間にめが!めがああmヴぃろじヴぉpfds!」

と泣いていたらしい。

男はストーカーで、半年程前から私をつけまわしていたらしいけど、私が全然まったくこれっぽっちも気付かない&スルーなもんだから調子に乗り、家に侵入して待ち伏せ。

クローゼットの中にあったそいつのバックには、注射器と麻酔薬?みたいな体が動かなくなる薬が入ってたそうです。

なんでそんなの持ってるかって、そいつも、そいつの親も医者だったから。

お金持ちってすごいですね。

被害届、受理されなかったよ。

警察の人に

「何か君が気を持たせることしたんでしょ?」

って嫌味言われた。

そいつの親は一応は謝ってきて、引っ越し代といま思うと口止め代という名の慰謝料を寄越してきて、私は泣き寝入り。

しばらくは何もなかったけど、初めに書いた通り数ヶ月後、男が降ってきた。

道歩いてたら、後ろの人が

「危ない!」

って叫んで、思いっきりバッグ引っ張られて転倒。

直後に真横でどさっみたいなぐちゃっみたいな音がして、硬い物がほっぺに当たった。

歯だった。

私はびびりすぎておしっこちびりながら失神。

そいつはやっぱり逮捕はされなくて、翌日の地方新聞に自殺未遂の男性が重体とだけ載ってた。

身バレしそうだからちょっとはしょるけど、ストーカー男と、男の親はそのあとしばらくして永遠に私に関わることはできなくなったよ。

一応これで終わりです