友人Aの結婚の事。

相手はAのストーカーB子。

Aは車関係の仕事をしていて、その取引先に居たのがB子。

当時Aは25歳で、22歳の彼女と同棲していた。

突然B子からAの携帯に電話とメールが鬼のように届き始めた。

B子にどこでメアドを知ったのか聞いたら悪びれることなく

「会社にあった取引先名簿だよ」

と帰ってきたらしい。

彼女は最初

「何かあったんじゃないの?何でもない男にこんなメール普通しないでしょ?」

と怒ってたけど、物凄い量の着信とメールを見たのと、Aが彼女の前でかなりきつくB子に注意したのにメールが全くやまないのを見て

「ヤバい人なんだ」

と納得したらしい。

自分も見せてもらったけど

朝「今起きたぁ~ねむ~い」「今バス停~まだかな~」「会社着いたよ~」

昼「やっと○○の仕事終わった☆」「今からお昼。今日は○○だよ。A君は何を食べるの?」

夕方(以下略)って感じで、ホント恋人に送るメールって感じ。

だからメール一覧表示して左ボタンを何度も何度も押しても押してもB子からのメールばっかりって状態。

Aの返信は

「何度もメールとか電話とかされても迷惑です。彼女が参ってるんで止めてください。本当に迷惑です」

って一件だけ。

でも全く気にしないで延々とメールが来る。

着信拒否したら?って言ったけど、B子が使ってる携帯ってのがB子の会社の携帯で、B子が会社に居る時はB子会社のPCメールだったりもするし拒否したら大事な連絡まで受けられないと言うので出来ない。


Aは一応社長にも相談したんだけど、すごく大雑把な職人気質な人なんで

「お前もてるんだなーわっはっは」

と言われて終わり。

同僚たちがB子に

「Aの彼女がいかに可愛くていい子か、Aがどれ位彼女が好きか」

を言ってもニコニコとして

「そーなんだぁ~」

とか言って、その直後にまた

「今日は仕事少なくてヒマ~」

みたいなメールをよこす。

さすがに変だと思った会社の人たちも、実情を知って

「何とかしないと」

と思ったらしい。

で、B子会社の社長さんがB子に注意したらしいんだけど、B子は相変わらずニコニコと「はぁい」と返事、でもその直後にまた内容の無いメールを送ってくる。

さすがにB社の社長も怒って、会社の電話や携帯の私用通話禁止、見つかったらペナルティ、更にAはB子が会社から持たされてる携帯を着信拒否に、なぜかばれていた自分の携帯番号とメアドを変え、会社携帯にB子の会社から電話が来ても取らなくていいと言う事になったらしい。

彼女も喜んで、「最近超ラブラブww」なんて惚気たりされた。

所が、ある日会社から帰りアパートの駐車場に車を停めたら、その真後ろに軽がぴったりと停まった。

驚いて降りたら、運転席にはB子。

固まっていたらニッコニコしながら降りて来て

「こんばーw」

と言われたらしい。

Aはキレて

「何してんだよ!!てめぇふざけんな!!」

って大声で怒鳴ったのにB子はニコニコして

「うふふ」

とか言ってたそうだ。

ゾッとしたって言ってた。


Aの怒鳴り声が聞こえたらしくて、彼女が家から出てきて

「どうしたのA!?」

って言ってきたら、B子はそのまま普通にA宅へ向かって、玄関で靴を脱ぎ始めた。

慌てて止めたんだけど、ニコニコしながら

「アタシは別に良いんで~」

とか訳分からん事を言う。

とりあえずAと彼女は玄関を上がり、B子には靴を脱がせずにかーなーりきっつい口調で

「ふざけんな」

とか

「迷惑だこのブス!」

とか怒鳴ったけど、B子の反応は

「えへへ」。

そこで会社の事とか、社長たちの事とかを交えて

「いかに困ってるか」

を懇々と説明したが、A曰く

「多分耳に入ってない…」

らしく言葉が途切れた時にニコニコしながら

「そう言えばウチの○○さんがこんな事して~」

と世間話をしつつ、笑いながら靴を脱ごうとする。

それをまた止めて懇々と、でもニコニコと(ry

その様子を見ていた彼女が物凄く怯えて

「私、部屋に居る…」

と戻ろうとしたら彼女に

「おじゃましてまぁ~す」

って笑顔であいさつ。

とにかくその日はかなり乱暴に肩や背中を押しまくって外に出したそうだ。

彼女は泣いて怖がるし、A自身も凄く怖いしで彼女をなだめながら引っ越す事を決めた。

Aは次の日、A会社とB子会社の社長にあった事を話し、B子会社でB子に厳重注意、もしAに対するストーカー行為を辞めないのならクビと決定。

B子はいつも通りニコニコと、新しいキャリアから着拒に負けずに連絡をしてよこし毎晩毎晩、当たり前のように、それこそ家に帰るようにA宅に来る。


とにかく話が通じなくて、というか聞いてなくてニコニコ、玄関開けなくてもずっとピンポンピンポン鳴らして、出ないと玄関前で

「あのねー今日ねー○○があってねー」

って笑いながら話してる。

思わずAが殴った事もあるらしい。

彼女に止められたけど、

「止められなかったら死ぬまで殴ってたかもしれない」

と言ってた。

それ位Aも、彼女も参ってた。

その殴った後も、玄関開いたのを見てニコニコしながら上がり込もうとしたらしい。

業を煮やした彼女が

「一回ちゃんと話しようよ!」

と言うので、家に上げて話をしたそうだがやっぱり全く話を聞かずにうふふ~と笑って世間話する。

「この女何とかしてよ!!私もうイヤだ!!怖いよ!!」

いい加減疲れていたAも

「俺だってヤダよ!怖いよ!」

それでガーーーーっと二人でケンカみたいになったが、目の前で自分が原因で人がケンカしてるのにもかかわらず、B子はニコニコ。

二人でぐったりして、AはB子に

「B子さん、お願いします。もうこんな付きまとうのやめてください。本当に参ってるんです、俺も彼女も。B子さんの気持ちにこたえる事はできません。もうここには来ないで下さい。お願いします」

と頭を下げたが、

返事は

「昨日~社長が○○をね~」

とニコニコしながらの世間話だった。

Aは腕つかんで引きずって、本当に「叩きだした」そうだ。

その日は一晩中かかって引っ越し先と転職先を探した。


数日間、B子の突撃に耐えながら引っ越しの準備を着々と進める。

転職先はA社長の知り合いの同業者の所と決まった。

その会社の近くに家も借りた。

オートロックなのが魅力で、多少痛かったが安全には代えられないから。

そして、A(もちろんB子も)が出勤中に彼女が引っ越す。

その晩はB子に後をつけられたら困るので、飲みに行った後にネカフェ。。

念のために新居には戻らず、数日間色々なネカフェ泊まり歩いた。

やっと新居に行き、彼女の顔を見た瞬間に泣いてしまったそうだ。

Aと話をしていて思ったのが、この頃まではAにも覇気があった。

元々結婚するつもりだったけど、入籍を早める事になって新しい職場でも頑張らなくちゃな、と意気込んでた。

俺達もみんな喜んで、応援してた。

初出勤後、新居に戻り彼女の手作りの夕飯を食べていたらインターフォンが鳴った。

しかもエントランスではなく、自宅玄関のインターフォン。

「あれ?」

って思ってスコープ覗いたら、そこに居たのはB子。

Aはひざから崩れ落ち、彼女は泣き叫んだ後トイレで吐きまくり。

次の日、彼女は家を出て行ってしまった。

もうそれからのAは抜け殻の様な、ゾンビみたいな感じ。

B子から逃げられない、って観念しちゃった。

それと彼女が居なくなったのがすっごく大きかったんだろう。

ちなみにB子に

「なんでこの家の場所が分かった?」

と聞いたが、

「うふふw」

と笑うだけで教えてくれなかったらしい。


B子は彼女が居なくなった事も全く気にせず、毎日凸してAも自然な感じで家に入り込むB子を止める気力も無く家に入れた。

B子は長年住んで居る様な気安さで寛ぎ、料理を作り、風呂に入って、Aの布団で寝る。

Aは台所で寝ていたそうだ。

その内、勝手に合鍵作られてた。

ある日、AがB子に

「家に帰らなくていいの?」

って聞いたら

「お盆には帰ろうかなっては思ってるけど、Aの休みにあわせて帰省するつもりだから、無理して休まなくていいからね」

と言われたそうだ。

自分の住んでいたアパートは解約したみたい。

俺達が色々言っても

「無駄だ…」

と言うだけでAは超無気力。

A曰く

「絶対に何もしてない。むしろろくに話もしていない」

と言ってたけど、信じるわ。

そんな変な生活が約1年ほど続いた。

ある日、B子に連れ出されて買い物に行った時、B子が

「○○ちゃん!?偶然!」

と離れた所に居た女の人に手を振った。

でも相手の子はB子を見るとハッとした顔をして、逃げる様に居なくなったそうだ。

さすがにAも気になってちょっと聞いたら、衝撃的な事を言われたらしい。


その逃げた女はB子の高校時代の友人。

B子は当時付き合っていた男に

「他に好きな人が出来た」

と振られたが、元彼が新たに付き合ったのは、B子のクラスメート。

卒業後にそれを知ったB子は、同窓会の時大勢の前で

「あんた達は絶対に幸せになれないからね!後悔させてやる!」

と宣言し、会場をつまみだされた。

その後、元彼カップルはデキ婚する事になったが結婚式の直前に元彼が事故で死亡。

残された女は一人で産む決心をしたが、生まれた子は先天性の心臓疾患があり生後数日で死亡。

女は自殺未遂後、ノイローゼになって引きこもり。

小さい町だったのでB子の呪いだと噂になってしまい、B子を見ると逃げる人が結構いる。

ニコニコしながらB子は

「あんなの冗談だったのにw」

と笑っていたが

「でも私って憎いと思った相手が不幸になる確率が高いの~w不思議だよね~w他にもこんな事があってね…」

と別の話をし始めた。

B子曰く、中学の時はいじめられっ子だったそうだ。

ある時耐えきれなくなって、いじめっ子に

「あんたは幸せになんてなれない、私がさせない!あんたが幸せになろうとしたら、私が壊す!」

その他もろもろの呪いの言葉を吐いた。

いじめっ子は怒って苛めが激化したが、授業中

「私が苦しんでるのを見て見ぬふりをするあんたも不幸になれ!」

と担任に叫んだ。

その数日後、担任の親が相次いで亡くなり、怯えた同級生達からのいじめはやんだそうだ。

所が卒業後、当時のいじめの主犯格が歩いてる所に車が突っ込んできて大けが。

当時のいじめっ子たちがB子の家に来て謝罪したそうだ。

「呪わないで下さい、許してください」って。

元彼の事件は、まだ事件のうわさが消えていない時に起きたので、B子は

「なんか過剰反応って感じで~偶然なのに~」

とニコニコ。

それ聞いた時、Aは完全に陥落した。

もう逃げられない、逃げたら殺される!って。

大体1~2カ月に一回のペースで飲んでたんだけど、毎回飲み会はAの話を聞いて終わりって感じだった。

Aがずっと延々と淡々とB子からされた事を語るだけ。

俺達も「Aが話す事で気が楽になれるのなら」と付き合っていた。

事件の話の事はこっちでも必死で否定した。

就職もしてる年齢の大人の親が亡くなる事は珍しくない。

事故も、絶対に合わないと断言できる人間はいないし、町単位で見れば誰にでも起こりうる事。

元彼の事故だってそうだ。

事実、俺自身も事故に巻き込まれた事はあるし、一歩間違ったら最悪の結果になってたはず。

赤ちゃんの事もそう。

全ての赤ちゃんが健康に生まれてくる訳じゃない。

だからこそ周産期科という専門の科が出来たんだ。

昔の沢山子供産んだ人たちには流産や死産、早期死亡の経験が大抵はある物だ。


そう言ってもAは居酒屋の壁に寄りかかり、両手両足投げ出して、うつろな目で

「もういいんだ」

と言うだけ。

一度だけ生気を取り戻す時がある。

力こめて

「俺は自殺はしない、だから安心してくれ。彼女が別れ際「自殺はしないで」って言ったんだ。俺は約束守るんだ」

でもホントにその時だけ…

後はゾンビ。

そして

「あの女が結婚するって言うから」

と結婚する事になった。

式には行ったが、やっぱり変な空気だったよ。

まず新婦は全くもって幸せそうな笑顔だったが、新郎は終始泣いてた。

俺達は「Aにも感情が戻ってきたな」と寂しい思いで見ていた。

事情を知ってる新郎会社関係者も同じ。

新婦友人は沢山いたが、あまりしゃべらず笑顔もない。

久しぶりにあったと思われる友人たちとの会話をもれ聞いたが

「やっぱ来たんだ…」

「バカなことだって分かってるけど…何か怖くて…」

「私も…断れなかったの…何となく…ね」

と言っていた。

式も新郎新婦側両方が微妙な顔。

新婦伯父が一人頑張って盛り上がってたが、皆ついて行けない。

新郎両親はずっと俯いていた。

出席した友人によると新郎母は席でたまに泣いていたそうだ。

きっとB子の事を良く知っているのだろう。

もちろん周りに居る近しい親族もだんまりで暗かった。

新婦母がお酌しに来たが、なぜかずっと謝っていて、それでもやっぱり娘の結婚が嬉しいのか

「縁遠い娘でしたが、貰ってくれる方が居て本当にうれしい」

と言っていた。


式の最後には涙ながらに親への感謝の手紙。

「障害はあったけど、Aが心から私を愛してくれたので乗り越えられた。今日からはAと二人で新しく家庭を作って行きます」

みたいな、まあ普通の事。

でも会場に居る全員が本当の話を知ってる状況なんで何と言うか妙に空気が冷たいと言うか、俺はゾワッとした。

改めてB子の異常性を認識したと言うか、肌で感じたと言うか。

周りもそんな感じだった。

お見送りの時の幸せそうな笑顔がまた怖かった。

二次会もあったが、普通の二次会みたいにビンゴもやったし、商品も凄く良かったが、基本的にはずっとカチャカチャと皿の音がするだけだった。

もちろん新婦は大盛り上がりで、

「○○君と○○さんってお似合いじゃな~い?」

とか言って独り者同士をくっつけようとしたり、

「私たちの結婚式でカップルが出来たら私たちキューピッドじゃない?」

何て言ってはしゃいでた。

新郎Aはゾンビ。


結婚後、Aはますますゾンビ化した。

もう飲みに誘っても来ない。

やっと来たと思ったらなんだかスルメみたいに干からびてる。

俺と同い年なんで30なんだが、もう50代に見える。

下世話な話だが性交渉は全くないらしい。

B子が子供を欲しがっているのでAVを見て精子を絞り出して、B子がそれを膣内に入れているそうだが、B子に渡す前に洗剤を混ぜてるんだ、と笑ってた。

「それって危なくないか?」

と聞いたら
「あの女が病気になるのと、子供ができるのとどっちが危ないんだ?」

と完全な無表情で聞き返されて何も言えなかった。

Aは個人の携帯を解約し、連絡先は会社携帯だけになってる。

ただ、連絡しても最近出社しない事が多いらしく会社の人が出る事が多々ある。

時間を変えて家に行っても誰もいない、か居留守。

A実家に電話したら、

「今はそっとしておいてください」

と言われた。

そう言われればこっちとしては何もできない。

何かあったら連絡を、と言っておいたがもう2年連絡がない。

もろもろの不幸は偶然か、もしくはB子の作り話だと思いたい。

ちなみにB子はブスじゃない。

里田まいにちょっと似てる今時の子だ。