ちょっと修羅場というには物足りないかもしれない。

登場人物

私、彼男、A子。

「A子」というのは、私が彼男と付き合い始める前から彼男の口から時々聞く名前だった。

彼女は彼男の幼馴染みの奥さんだった人だが、結婚後すぐにDV男と化した旦那さんにひどい目に逢い、彼男がそれを助けてあげたところ、A子さんは彼男を好きになってしまったらしい。

なんとかDV旦那と離婚までこぎつけたところでA子さんは彼男に告白。

でも彼男は断った。

それでも諦めないA子さんは、

「お互い恋人いないんだから良いでしょ♪」

という主張の基、毎晩彼男の家に来ては夕飯を作って一緒に食べていた。

以上が私が彼男と付き合い始めてから聞いた話。

A子さんの主張からすればA子さんはもう彼男の家には来ないはずだけど、もちろんそんなはずはない。

恋人が出来たと告げてもA子さんは毎日彼男の家でご飯を作ろうとする。

仕事上がりの時間になるとA子さんから電話とメールの嵐。

放っておくとご飯を作って家でずっと待ってるので、

「今日は彼女と夕飯食べるから作りにこなくて良い」

の電話が毎日必須だった。

想像に難くないと思うけど、A子さんは何かあるとすぐに自殺をにおわせる人らしい。

以前A子に対して

「迷惑だ」

「合鍵を返してくれ」

というようなことを言ったら、A子さんはその場で包丁を自分の首に当てたことがあったのだとか。


そんな状態が半年以上続いて、彼男とは正直もう無理かも思っていた。

彼男が好きだったし正直A子さんに相当むかついてた部分もあって、自分が彼男と別れた後にA子さんと一緒に居るのを考えたら、腹が立つし悲しいしでここまでぐだぐだ来たけど、食欲もなくなり体調も悪くなって、このままじゃダメだと思ってたところだった。

ある日唐突に、A子さんと対面する日が来た。

彼男の家に行ったら、なぜか居るA子さん。

「初めまして~」

とにこやかなA子さんの横で、気まずそうな彼男。

勿論何も聞かされてなかった私は完璧に丸腰で、心臓ばくばくさせながらとにかく冷静になることだけ考えてた。

暫く3人で話した後、彼男がご飯を作ることになり退室して、A子さんと2人でリビングに取り残された。

何言われるんだ、何されるんだ、と思ってたらA子はマシンガンのように語り始めた。

上手く書けないから羅列すると、

・彼男って優しいでしょ?でもA子にしか見せない困った癖がry

・彼男、私ちゃんみたいな若い子は妹みたいでほっとけないんだよねぇ~でもA子にはこんな我侭言っry

・3人で仲良くしましょう!彼男は私ちゃんとご飯を食べない時は、A子と食べる。え?何がダメなの?

・A子と彼男は運命の相手なんだから傍にいるのは当然。

・今世では、色んな障害(=私w)があって結ばれないかもしれないけど、前世から会う約束をしてたの!

見たいな事を、私の反応の薄さなんてお構いなしに喋ってた。

その当時恥ずかしくて口にしたことはなかったけど運命とか赤い糸とかこっそり信じてた私は、

「A子と彼男は前世から愛し合う約束をしてたの~」

とか言うA子さんの言葉にめちゃくちゃ傷ついたw

もう帰りたい…と本気で泣きそうになってた時。

「前世でも来世でも、A子と彼男は出逢うの。私には解るの。私にはそういう力があるから」

ん?と思わず首を傾げたら、A子さんはニコニコしたままちょっと身を乗り出してきた。

「私ちゃん最近具合悪いでしょう?それ、A子のせいなの」

「は?」

「A子、\"そういう力\"が強いから、念じすぎると害のある念を飛ばしちゃったりするの。無意識なんだけどね! あ、霊感も強いから、私ちゃんのとこに行かせちゃってるかも!最近肩こりとかしない??」

嘘くさいと思われるかもだけど、

『そういう力が強いから害のある念を~』

とか、

『霊感が強いから霊を行かせちゃった~』

とか本当に言ってた。

赤い糸は信じるけど、霊感語りが大嫌いな私は、A子さんに関する色んな感情が一瞬で氷点下まで冷めていった。

ついでに以前、頭痛か腹痛かなんだったか具合が悪かった時彼男が、

「それA子のせいかも…」

と呟いていたのを思い出して、ああ彼男はA子さんに完全に洗脳されてるんだなーとその時初めて気付いた。


その日は彼男のご飯を食べてすぐに帰って、その後も彼男と少し距離を置きながらA子さんと離れるように言ったけどダメだった。

同時に、あの対面した日以降A子さんから私にメールが来るようになって、

「今日は彼男と○○を食べました♪」

「最近彼男と連絡取ってないんだってね!彼男は元気だよ♪」

みたいな内容だったのでA子さんは自分から彼男と離れることはないよ、と言ってみたけどそれでもダメだった。

彼男の事は最後まで大好きだったけど別れた。

別れたけど悔しいので、A子さんと離れたいと言う彼男を応援し続けた。

一年程経って、ようやく

「A子に迷惑だってはっきり言った。もう家には来ないし、来ても入れない」

と彼男から連絡があったので、それに返事をした後、携帯の電話番号とメールアドレスを変更して彼男とも連絡を絶った。

時々A子さんさえいなかったらなぁと思い出すこともあったけど、今はもう吹っ切れて幸せにやっている。

ちなみに関係なかったから後だしだけど、彼男は私の10歳年上、更にA子さんは彼男の10歳上だった。

年下の小娘によってたかって大人気なさすぎて思い出したら今でも腹立つw

吐き出させてくれてありがとう。すっきりした。