父方の先祖の墓参りに行ったとき、墓守をやってる家に一方的に跡継ぎに決めつけられ、そのまま監禁されそうになったのが修羅場。


その家は「先祖代々の土地がー」「ご先祖様のお墓がー」と一歩たりとも土地を離れようとしないっていう典型的な田舎の家。

山の斜面に広がる墓園の真向いの集落にあり、家からお墓が見える立地になってる。

江戸時代から時間が止まったような家で、実際、時代劇に出てくるような、やたら玄関が広い1ルームのボロい長屋。

錆だらけの漁具の山の先に、囲炉裏を囲んで4畳半の環境に3~4人が寿司詰めで暮らしており、台所は男子禁制。冷蔵庫や調理器具に触れるのも厳禁。


土地から離れないというのは比喩じゃなくて物理的にそのままの意味。

ご先祖のお墓が見える場所、自宅の近隣から一生出てはならないという意味で、実際その通りに何代も暮らしてきてるらしい。

家の見た目だけじゃなくて住人も江戸時代から時間が止まったかのよう。

お墓を見守ること以外には一切の興味関心を持たず、小学生レベルの社会知識すらない。

未だに天皇を崇拝してて、法律や一般常識、新しい知識や技術は全て神様が決めて天皇に宣託し、それを元に天皇が法律を作ることで広まっているらしい。

テレビがカラーになったのは天皇が会社に命令したから、台所が男子禁制なのも、法律で決まってるんだそうだ。


人権感覚はゼロで人を完全に物扱い。
人格そのものを「意味が無い」と一蹴。

うまく表現する言葉が見当たらないのだけど、個人の人格をシミやニキビのように思ってて、消してあげることが相手にとっても幸福だと思ってるというか、本気でお墓を護ることだけが人間の全てで、それ以外の欲求や関心を病気だと思ってるというか・・・。

こういうと俺の方がメンヘラだったんじゃ?みたいに思われそうだけど、その家の人たちは心の存在そのものが心の病気だと認識してる感じだった。


世間知らずとか田舎者だとかそういう生易しいレベルじゃなくて、もはや異次元人とか宇宙人とか表現していいぐらいに一般常識が通じず、会話が成立しない人たちだった。

本気でもう、同じ日本語を話してる同士なのに、地球上にあんなに話が通じない生き物がいるのが信じられなかった。


俺が墓参りに来た時は、俺が長男だから、当然そのまま家に居着いて墓守になりのきたものと思ってたらしい。

交通が不便なド僻地だから親戚のマイカーで連れてこられたのだけど、親戚も俺を置いてく気満々。自力で帰るのもほぼ無理だった。

「仕事が~、家が~、俺にはやりたいことが~」と何を言っても「墓守には必要ない」「住めば都」で片付けられ、話にならなかった。

警察に通報しようにも携帯の電源が切れる寸前で通話まで持ちそうになかった。


結局、墓守になるまでの準備期間という形で解放され、以後10年以上頑なに連絡を絶ってる。

向こうから出向いてくることは無いので無視を決め込めばこのままでよかったのだけど、最近祖父が死んでまたぶり返してきたので戦々恐々としてる。


もっと具体的なことを思い出して書くべきなんだろうけど、詳細に思い出そうとすると当時の心境を思い出して狂いそうなんだ、すまん。