職場の同僚の30代既婚女性Aが、昨年末に1週間ほど入院していた。

そのとき俺たちはAの入院については「体調不良で」というふうにしか聞かされていなかったのだが、最近になってAがその時のことを「もう今は笑い話だから」と言って話してくれた。

その話の内容が結構衝撃だった。


Aは「ノイローゼになって何も食べられなくなって、自宅で倒れてしまったから入院した」と話してくれた。

そのノイローゼの原因は同居の義父(Aの夫の父)ということだった。

「義父が寒いギャグばかり言って、それに対してただ笑うだけじゃダメだった。
義父はギャグに対してツッコミやボケをして欲しがって、私がそのツッコミ方やボケ方を間違えると物凄い怒ったんですよ」というようなことをAは言った。


例えば義父が「布団が吹っ飛んだ」と言った時は「私は太ったー」と返さなければいけない、と。

更に「紙がない」と義父が言った際には「髪ならお義父さんの頭の上に」と返さなければいけない…等いろいろな決まりがあったようだ。

ちょっとでも義父の意にそぐわない返し方をすると、義父はとんでもなく怒鳴ったようだ。

夫や義母は、義父のギャグは完全に無視していて、Aが義父に怒鳴られているときも夫や義母は「我関せず」といった感じだったらしい。


俺はAからその話を聞いたとき、言い方は悪いがその話自体が冗談に思えたくらいだった。

そのくらい信じられない話だったよ。

あまりにも酷い状況だし、その状況だったらノイローゼにもなってしまうだろうと思ったわ。

とにかくそんな状態で食事がのどを通らなくなったAは自宅で倒れて入院…ということに。

入院中は医者や看護師に話を聞いてもらい、薬などを処方されてなんとか持ち直したみたいだわ。

医者には

「別居が一番だけれど、それが無理ならギャグとその指導は無視しなさい。人の精神を不安定にさせるギャグは、ギャグであってギャグじゃない。自分を守るためにスルーも大切」などと言われたようだ。


そして今もAは義父と同居しているわけだが、Aが義父のギャグを無視するようになってからは、義父はほとんどギャグを言うことはなくなった…ということだった。

Aは「私が同居の最初の頃に、変に気を遣ってギャグに反応したのがいけなかったみたいです。やっぱり同居するなら、出来るだけ最初から無理しすぎないようにしなきゃね」と言っていたわ。


人をノイローゼにさせるギャグにも驚いたが、それをスルー出来るようになったAは凄いと思ったわ。

嫌味抜きで、尊敬に値するよ本当に。

『気を遣うことをやめる』って思いのほか難しいからさ。