幼稚園児のころ。

ある日家に帰ると、玄関先に男の子とその母親らしき人がいた。

なにやら謝罪をしにきていたようで、何があったのかその場で母に聞いた。

話を要約すると、その男の子は姉の同級生(私の4つ上)で、姉に石をぶつけて遊んでいたらしいということだった。

それを聞いた瞬間に幼心に「この野郎潰す」と思い、「なんでそんな危ない人をうちにあげてるの!?」「こわいー!」とわあわあ泣いた。

自分はめったに大きい声を出さない子供だったし、泣く時もこっそり泣く子だったから、威力は抜群で、母はすぐに相手の謝罪を切り上げさせて相手を追い返した。

男の子の母親は私が泣いた瞬間から一層恐縮してペコペコしながら帰った。

私はその男の子の顔を覚えて、その後そいつが現れるところに先回りしてはヤツの顔を見て怯えて走り去るという演技を繰り返した。

石を投げた件は当初広まっていなかったようだが、怯える私の様子が尋常ではないと周囲が感じてくれたようで、友だちと一緒にいることが多かったその男の子は、どんどん一人になっていった。


ある日、夕暮れ時に一人で公園にいるそいつを見つけた。

しょぼくれた背中を蹴り飛ばしてブランコから突き落とし、這いつくばったところをまた蹴った。

立ち去ろうとしたらそいつと目が合った。

めちゃくちゃ笑顔になってる私を見て怯えてるのに満足して家に帰った。

補足だけど、そいつはビクビクした態度が染み付いたいじめられっこ体質になったらしい。

DQNに追い回されて陰惨な学生生活を送っているようだと姉に聞いた。

私はもうやりきったからその辺はどうでもいい。