先日、大叔母の法事で私たち兄弟が実家に帰ったんだけど、法事のあと母が用事で外出したので、父・兄・私・弟の4人で食事してた。

ちなみに大叔母は子供がいないので父母がずっと看ており、私たちにとってはもう一人の祖母のようなものだった。

親子とはいえ私たちも成人してるし酒が入ってるから多少下世話な話にもなり、弟が

「男の本音としては、賢い女より無知な女のほうがいいという人も多い」

というような話をしたら、父の表情が変わり「お前、本気でそれを言ってるのか!?」と怒った声で言った。

弟はすぐに「いや俺がそう思ってるわけじゃ」と訂正したが、子供のころ「ここで悪さをやめなければ平手打ちが飛んでくる」というときの雰囲気だったので少々ビビった。

その後、父が話してくれたうちの家系の話が衝撃的だった。


私の高祖父(ひいひいじいさん)は、田舎から出てきて商売に成功したやり手の人で、駅前に「ビルディング」を持つようなお金持ちだった。

高祖母は結構年下のお嫁さんで、曾祖父がまだ小さいうちに亡くなった。

でも高祖父はそれを見越して準備していたため、家督は曾祖父、後見人に高祖母という体制を作って商売は継続した。

で、事実上の女主人になった高祖母がだんだんおかしくなっていったらしい。

父の言い方によれば「欲に取りつかれた」。


高祖母は一人息子の曾祖父を溺愛しながらも、曾祖父やその嫁によって下剋上され女主人の地位を追われることを恐れたらしい。

特に、優れた曾祖父の嫁によって家庭内での立場もなくすことをすごく恐れた。

そこで高祖母は曾祖父の縁談相手には、女学校とか家政学校とかを出ているようなお嬢さんは避け、同じような理由で同格以上の家のお嬢さんも避けた。

そして、「尋常小学校をまともに出ていないくらい」の無知な娘を求めた。

戦前とはいえ、小学校をまともに出ていないといえば、極貧かDQNか、さもなくば重病か障害者かというようなもの。


1人目のお嫁さんは、流産か死産かがもとで亡くなり、2人目のお嫁さん(私たちの曾祖母)は、祖父、大叔父、大叔母を生んでから病気で亡くなった。

3人目のお嫁さんは、何回か流産、死産した後、もう一人の大叔父を生んだ。

3人の嫁はみんな、高祖母や曾祖父に「何もできない嫁だ」と見下され、暴力を受けていたらしい。

おそらく軽度の知的障害者のような人を選んだのだろう。

父が面識のある3人目のお嫁さんは受け答えが知的障害者の雰囲気だったらしいし、病気で早世したという末の大叔父もそんな感じだったらしい。

祖父兄弟が健常なのは、曾祖母の状態が遺伝しないものだったか、置かれた環境とかで後天的に無知、知的障害的になっていただけなんだろうか。


高祖母は戦中になくなり、戦後のぐちゃぐちゃと曾祖父の無能で、資産は残っても家業は傾いた。

嫁はそういう状況だから夫を支えるなんてできる状態ではなく、曾祖父はそれを逆恨みのように家族への暴力・虐待に向けていた。

家業を清算するという頭も働かず、浪費はするので実際の生活は苦しくなる一方だった。

高祖母の長男教でスポイルされかけていた祖父は大学に行き社会に出て覚醒

(戦中の反動で、リベラル思想とかが終戦直後の大学とかに一気に入ってきたのに感化されたらしい)

田舎の本家筋に養子に出されていた大叔父と協力し、診断書を偽造して(昔はできたのか?)曾祖父を「禁治産者」にして権力を奪い、家業を清算、高祖母自慢の家も「ビルディング」も、借金のかたに売り払った。

で、曾祖父と嫁・末の弟を別居させ、曾祖父は田舎の大叔父の家の座敷牢みたいなところ(父は見たことがあるらしいが、本来は結核患者等が村に出た時に隔離するような目的だったらしい。曾祖父はすでにアル中のようになっていたので、ある意味目的通りではあった)に押し込めて死ぬまで飼い殺し、嫁と末の大叔父は祖父と大叔母が最後まで援助していたという。


そして、3人目のお嫁さんが亡くなったときに、「自分たちを虐めた爺・婆と、死んでも同じ墓ではかわいそうだ」と祖父が言って、家の墓とは別に、曾祖父の3人のお嫁さんと末の大叔父の墓を別に作った。

1人目のお嫁さんは、それまでちゃんと霊標に名前も入れてもらえてなかったらしい。

3人目のお嫁さん、父から見れば義祖母に、父はすごくかわいがられたらしい。

テレビの中のことと現実の区別がつかない時があり、テレビの特撮の怪物や悪人にすごくおびえたりしたらしい。

「ばあちゃん、あんなの俺がやっつけるからね!」と父が言ってなだめたこともあるといってた。

かわいがられた思い出故に、成人して祖父から真相を知らされてからは高祖母のやったことが絶対に許せなくなった、といってた。


自分の家系に、こんな暗部があったことが衝撃的だった。