かれこれ50年近く前の話。

当時、母は海に近い喫茶店で臨時のバイトをしていた。

その店の名物の一つにナポリタン(正式にはそういう名前では無かったが、今で言うナポリタン)があった。

店長が少しだけ席を外した時に、1人の男性からナポリタンのオーダーが入った。

母ともう1人いた女の子のバイトは店長がいないからと断れば良かったのにオーダーを受けた。

が、ここで大きな問題が。本来トマトケチャップで出すあの赤さをどうするのかを知らなかった。

実は店長が席を外したのは自宅に保管してある予備のケチャップの補充の為で、それはつまり現在ケチャップが無いということ。

それを知らない母たちはあるものを発見した。

一本のタバスコだ。

茹でたパスタと具材を混ぜた所に“何か”を加えて赤くしている事は知っていた2人は、これだと確信、一本丸々投入した。

が、当然それは間違いで立ち込める刺激臭&タバスコが蒸発した煙。

間違いだと気づいた時には既に謎パスタが出来上がっていた。

ここに更なる不幸が。頼んだ男性、ナポリタンがどんなものか知らないので、そういうものなのだと勘違い。

ゲホゲホむせながらも完食。

御代を頂いた所で店長が戻り、店内の異様な臭いに母たちを問い詰め間違いが発覚。

母たちはしこたま怒られ、男性には後日ちゃんとしたものを振る舞う事を約束させられたそうだ。


この話は実家でナポリタンが出たときの母の鉄板ネタで、真偽の程は母を信じるしか無い。

時代?的にはナポリタン的なパスタもタバスコもあってもおかしくは無いが、家族の中では話半分に聞いている。