よく分からないくらい自分の予約した指定席に誰かが座ってる、という体験がある。

そもそも電車で移動することが多いというのもあるかもしれないが、その日は出張で大阪に行くので東京から7時過ぎくらいののぞみの指定席を取った。

2列席窓側が理想だったが、2日前ではこの時間の指定席はなかなか希望の席にはならず、1A、つまり海側3列席の窓側だった

朝飯の弁当を買って、さて席でゆっくり食らうか、とおもったら既にその席には先客がいた

そいつは蟹だった

蟹ですよ蟹。みんな知ってるカニ?

白い発泡スチロールの箱に入った大きなタラバだかズワイだかの蟹だった

俺はえ?と思って何回も何回も席番を確認したが間違ってない。

一旦外に出て列車番号も間違ってないか確認したが間違ってない

再度戻ると通路側におっさんが座っている。

そのおっさんも思いっきり蟹をガン見している

あと2分ほどで発車するが誰も来ない。蟹は泰然としておられる

発車ベルが鳴って動き出すが、やはり誰も来ない。思わず変な笑いがこみ上げる

思い切っておっさんに「あなたのでは無いですよね?」と聞くが、おっさんも声にならないのか「ぉうううっぅん」とか言う

腹が減ってるので、俺は意を決して蟹様の発泡の蓋を締めて、座席下にもある蟹関係の土産ぽいものを全て網棚にあげた

そして憤然として座ろうとしたら、「すみません、すみません、、」などと言って、普通の中年サラリーマン風の男が現れた。

その男に「あなたの?」と聞くとただただ「すんません、本当にすんません」と言って、網棚の蟹達を受け取ってそそくさと後ろの号車へ移っていった

なんだったんだ、という顔をして通路側のおっさんと目が合い変な微笑を浮かべたのは今では笑い話でしかない思い出