近所に引っ越してきた障害児が、朝の忙しい時間帯に狂った雄叫びを上げて往来を走り回っていた。

母親は放置どころか注意した人に逆ギレで「うちの子が正しいのよ!」と主張。

私を含めてご近所は、聞こえないフリをして過ごしていた。

が、ある日、障害児が雄叫びを上げたら、突然銃声が響いた。

一瞬で声が止んだと思うともう一発銃声が聞こえ、今度は母親が悲鳴を上げて、障害児を自宅に連れ込んだ。

それから一時間くらいしてお巡りさんがやってきて、「銃声が聞こえたと通報がありましたが、銃を持っているヒトを見かけませんでしたか」と聞かれたので、無言で目の前にいるお巡りさんを指さした。

「いや、私じゃなくて」と困り顔のお巡りさんに、私も苦笑して、

「この辺じゃなくて河原で聞いたほうがいいですよ。今日から狩猟解禁日ですから」と忠告すると、お巡りさん「あ」とひと声漏らして納得した表情。


うちから10分とかからない河原では猟銃の使用が認められているが、最寄りの駐在所でも車で15分、市の警察署となると30分以上離れている。

今回は一時間かかったようだが、そのせいか忘れていたらしい。

警察官から「問題ないですよ」と聞かされた障害児の母親は、以前の住所でも問題起こして離婚され、この辺りの安アパートに引っ越してきたそうだが、

「銃声が聞こえるようなところじゃ暮らせないわ!」と日を置かずに出て行ってくれた。

去年は河原のハンターさんに差し入れを持っていく人が多かったが、今年は静かな狩猟解禁日を迎えることができた。