かなり昔の話です。

厳格で冗談も通じない頑固な父が犬を拾ってきた。

目も開いていない子犬で、犬種は不明。

動物嫌いの父がどうして犬を拾ってきたのかはわからないが、父はその犬を物凄く可愛がっていた。

私も母も妹もその犬に心奪われ8歳になるまで可愛がっていた。

その犬は成犬になっても小さくて、近所のおばさんや子供に絶大な人気を誇っていた。

見た目はゴールデンレトリバーの子犬そのもので本当に本当に可愛かった。

(獣医の見解だとおそらくチワワとダックスフンドのミックス)

犬が8歳になっても見た目は子犬のようで、あれだけ口うるさく頑固な父がデレデレ状態、随分と柔らかい雰囲気になり、家族内の空気も暖かなものとなっていった。

そこで現れたのが近距離に住む父の母親(私の祖母)。

やたらと我が家に凸しては犬が嫌いだ連呼。

父と私はそんなに犬が嫌なら来るな!と祖母を追い返していた。


そして祖母はやらかしてくれた。

犬の腹をかっさばいて殺しやがった。

父は大激怒、母は絶叫、私と妹妹は大号泣。物凄い修羅場となった。

祖母いわく「あの犬がいつまでも子犬なのはおかしい。8歳なのになぜ成長しないのか。あ!もしや嫁(母)が妙な薬を打って成長を止めているのではないか。よし、確かめよう!」と我が家に侵入、犬をさらい、腹を開いたとのこと。

父は自分の母親だろうが構わずに通報、祖母は御用となった。

祖母は最後まで「嫁(母)が法律に違反する薬が~」と喚いていた。


犬がいなくなってからの父は見ていられなかった。

仕事には行ってはいたが家では連日塞ぎ込み一気に老け込んだ。

犬の葬儀のとき、初めて父の涙を見た。

その後、近所では母が犬に怪しい薬を投与しているという噂が飛び交い、引っ越すこととなった。

母も相当ストレスがきていたようで倒れて入院。父は一気に老け込みぼけが始まった。

このとき中学生&小学生だった私たち姉妹は不安と恐怖で修羅場どころの話ではなかった。

現在母は未婚の私たち姉妹と一緒に細々と暮らしている。

父は2年前に他界しました。