父は娘の私の目から見てもエネ夫。

マザコンで、外でいい格好するために母を利用する人。

母は母で「お父さんはああいう人だから」で諦めるエネME。

そんな両親が共に50代になり定年が視野に入ってきた頃、唐突に母が、とっくに解散した芸能グループのファンになった。

通勤途中にニコ動で「懐かしの映像」を見ているうち好きになっちゃったらしい。

それを知った父が激しく母を馬鹿にするようになり、引退したメンバーについてわざわざネットで調べたりして、母の前でその情報を話してあざ笑ったりした。

とっくに解散してるからお金をつぎ込むこともなければライブに行くこともないし、家事や仕事がおろそかになったわけでもないのに

父はしつこく「今更」とか「馬鹿だ」「趣味が悪い」「ババアのくせに」と毎日のように母を笑っていた。

母は父に何を言われても「はいはい」って感じで流していた。

横で見ている私の方がイライラした。


2年くらいしてそのグループのことなんて父も私も忘れた頃、父がぼそっと「定年後は旅行でも行くか」と母に言った。

母は即効で断った。

そして、「行くなら一人で行って。切符もホテルもあなたが手配しなさい。着替えも自分で用意して持っていって。そのくらい一人で出来る年ですよね」と冷たい口調で言った。

母が父に対してそんな風に言うのは初めてで、父も私もポカンとなった。

あとで母に聞いたら、私が無事就職して独り立ちしたらこの家を出て行くつもりだって言われた。

離婚はしてもしなくてもどっちでもいいし、何ならちょっとくらい慰謝料払ってもいいけど、とにかく定年後の父と一緒にいたくないんだって。

そう思ったきっかけが例の解散済みグループのことだと知って驚いた。

きっかけというかコップの水が溢れる瞬間がそれだったってだけだと思うが、とにかくあの時期に「ああもうこいつといたくない」と強く思ったんだそうな。

母は資格持ちだし、定年退職後も働き口はあるから離婚も別居も反対しないよとだけ言っておいた。

しかし嫁姑戦争にも借金にも耐えた愛情?がこれで壊れたのかーと、なんだか複雑。

母のためにはいいんだろうけど。