中学3年生の時に初めて同じクラスになった同級生が、ヤクザの幹部の娘だった

当然周囲は知ってるけど、俺は病気で2~3月に1回くらいしか出校できなくてボッチだから情報共有なし

表向きは(本人曰く)「お父さんは建設会社の部長なの」ってことになってて、ヤクザだってのは公然の秘密だったんだけど、俺はそんなことも知らずに建設かーなんてのんきに思ってた

普段は病院の中の教室で勉強してるから、微妙にみんなと勉強の進み具合が違う

ある日授業の内容が理解できなくて、隣の席だった幹部娘に「ノート見せて」って言ったら「しかたないねー」って机をくっつけて見せてくれた

声のでかいガサツな女だと思ってたのに予想外に丁寧できれいな字で、しかも彼女からいい匂いがして、その1日だけで惚れてた

「こんなのもわかんないの?病院の教室ってどんなだw」って笑われても嫌な感じがしなかった

その翌週、彼女が「これ試験範囲。学校出られるなら使いなよ」ってノートのコピーを持って自宅に来た

小学校の頃からずっと幽霊同然な俺を見舞いに来た初めての子

残念ながら試験日は検査で病院にいたので受けられなかったけど、お守りみたいにノートを持って行った

当時は携帯も普及してなくて、彼女とは2~3か月に一度会えるだけ

たまに気が向いたら彼女のほうから「これノート」ってコピー持って会いに来てくれる

俺の母親がお礼にお菓子用意してたら「これうまっ!」って俺の分まで食われた

その顔を見ながら今度手術受けるんだ、うまくいったら付き合ってって言ったら「帰ってきてからもう一回ね」と言って帰って行ってしまった

それから検査検査の連続でしばらく会えなくて、いざ手術となった前日に病院に母親が彼女からって言ってお守り預かってきた

母親が「あの子と付き合ってるの?親がああじゃなけりゃいい子なんだけどねぇ・・・母さんは反対」って言いだして、そこで俺が何のことかを聞いて、初めて彼女の親がヤクザだと知った

母親は俺が承知の上だと思っていたらしくて、俺がびっくりしてることにさらに驚いてた

手術が終わってからの入院が長かった

リハビリや合併症でずいぶん苦しんだ

彼女が見舞いに来るかなって思ったけど、一度も来てくれなかった

もしかしたら母親が彼女に何か言ったのかもと思って、母親に理不尽な八つ当たりもした

本当は卒業式も難しいって話だったけど、病院側の配慮で短時間だけど一時退院が認められた

久しぶりに会った彼女はやっぱり声がでかくて可愛かった

改めて告白したら「私、高校に行くから。そこで彼氏見つけるつもり。じゃあね」って振られた

高校受験もできなかった俺に彼女と付き合う資格はないよなーと泣く泣く納得した


それから2年遅れて高校入学

大学にも進学し、2回手術して、2回留年してやっと卒業、就職

そこで知り合った女性と2年交際して結婚して翌年子供に恵まれた

三十路にしていっちょまえになれた気がして、初めて中学の同窓会に行った

そこに彼女はいなかった

周りが言うには、彼女のお父さんが逮捕されて、それで地元にいられなくて引っ越したんだと

高校2年で妊娠して中退、深夜のドンキにいそうな見た目のシングルマザ―になってたって聞いた

「おまえがあいつとやたらと仲良くするから冷や冷やしてた」と当時の同級生に言われて、なんでかわからんけどなんかすげー泣きたくなった

思い出してまた泣けてきた