携帯電話のなかった、大昔の高校生の話。

高校生のとき、模試の最中に同じクラスのA君が突然震えだしたかと思うと、泡ふいて倒れた。

監督の先生もびっくりしていると、近くの席にいたA君と同じ小学校だったというB君が「てんかんの発作だ」と立ち上がり、

てきぱきと周囲の机をどかしてAを横にすると持っていたハンカチを噛ませて

「こいつ小学校の時にも同じことがあったんだよ。A!A!わかるか!」と声をかけるがA君は反応しなくて、「先生、救急車呼んできて!」と、先生を走らせた。

すぐに救急車が来てA君は運ばれていったので、皆模試を続けた。

模試が全部終わった後、担任からA君は意識が回復したと伝えられ、B君はヒーローのように皆に凄い凄いと言われてたけど、照れくさいのかさっさと帰ってしまった。

衝撃だったのは翌日。

A君は遅刻して2限目の途中で「おはようございます!」と元気よく教室に入ってきた。

頭にラグビー部の部室からかっぱらってきたヘッドギアつけてた。※A君はテニス部

笑っていいのかどうすればいいのかわからなかったんだけど、A君は授業もそっちのけで「B、ごめんな。ありがとう!」とB君に握手を求めた。

「皆も心配させてごめんなー!模試の邪魔してホントにゴメン!!」とクラスの一人一人に謝ろうとしてきた。先生に怒られてやめたけど。

ラグビー部のC君にも「パクるな!」と怒られていた。

それまでA君は、共学の男子高校生にありがちな、男だけで固まって女子とは口もきかないような硬派な感じだったので、突然のキャラ変更に皆戸惑ってしまった。

やがて馴染んで、クラスのムードメーカーになったけど。

それからA君は発作も起こすことはなく、無事に高校を卒業していった。


この前同窓会があって、B君が来ていた。

A君のことがあったからかどうかはわからないけど、B君は看護師をしているらしい。

A君は来ていないのかと思ったらホテル(同窓会の会場)の黒服に肩叩かれて、よく見るとA君だった。

A君の特権でかなり安く借りられたそうだ。(ただし本人は出勤)

A君は今も車の通勤は危ないからって、ホテルから歩いて通える場所に住んでいる。

当然あの模試の話になって盛り上がったけど、その後のキャラ変については

「まわりの男子に合わせて硬派を気取っていたけど本当は明るいキャラになりたかった。皆に心配させたし腫れ物扱いされるのも嫌だから、ふっきれることにした。Bには感謝しかない」と言っていた。

でも救急車で運ばれた翌日、ヘッドギアつけて教室に入ってきたA君を見たとき

「昨日の発作で頭がおかしくなったのか…でも本人はそれに気づいていないのかもしれないから、合わせておこう」って、各自の判断でA君を腫れ物扱いしていたことは、ついに言い出せなかった。

それまでのA君は顔もいかつくて一部女子には怖がられていたから。

おわり。