むかーし昔、大学進学時に一人暮らしを始めたが、貧乏だったので、借りたアパートは空家も多い古い住宅地の暗い路地をくねくねと曲がった奥のどん詰まり。

もちろんバイトは必須。女だけど深夜2時ごろまでバイトしてた。

帰宅時は細心の注意が必要だった。

ある冬の深夜。

徒歩でバイトから帰宅途中、アパートへ続く路地のちょうど曲がり角に、その辺りでは見たことない大きなRV車が、道の左に寄せて停まってた。

後ろドアにキャリーをくっつけて、スキー板が2組刺さっていた。

「いいなあ。スキーかあ。もう何年ものってないなあ。金も車もないから、行きたくても行けないなあ」

なんてことを思いながら、車の右側から前方へ回る形で、曲がり角を左折。

突然、暗がりの中、車の前から人影が!

男がズボンを膝まで下ろし、中腰で尻を突き出している。

変質者?!スキー板見てて油断してた私、悲鳴もあげられず、息を飲む。

「あの…ティッシュをください…」

忘れもしない、泣きそうな声。でも私だって驚いて泣きそう。

男は尻を出したまま、すり足でジワジワと近づいてくる。

とっさに、コートのポケットに入っていた、残り少ないポケットティッシュを差し出した。ほぼ無意識。

奪うようにティッシュを受け取る人影。

そして、「これだけですかぁ…」とまた泣きそうな声。

ぶんぶんと首を縦に振ったら、やっとの事で足が動いてくれて、走ってアパートまで逃げた。

背後からはまだ何か声がしていたかも。

部屋にたどり着いてから、どん詰まりにある、このアパートまで追いかけてこられたら逃げ場ないな、とか、警察?でも直接危害加えられてないけど電話していいの?とかパニック。

鍵かけて、ドキドキが収まるのを待って、ふと思った。

ズボン下ろして、中腰で、ティッシュください、って、うんこしてたのか?もしかして?

じゃあ、残り1~2枚しかないあのポケットティッシュじゃあ到底足りないだろう。

でも、追加のティッシュを持って行ってあげる勇気は当時の私にはなかった。

修羅場なのは、冬の夜にあの路地で尻出してたあの男性だったのかも。

ちなみに次の日は大学もバイトも休みだったのでひきこもり。

現場がどうなっていたか、見なくて済みました。