義父は優しいけど気の小さい人だった。


義父の実家は山の上のとても不便なところにあって、数軒残った集落の全てのお宅が既に町に下りて生活しており、義父を含む数軒が一応は住める状態を保っていた。


義父は長男で弟妹が4人いるが、4人とも今は遠方の都会暮らしで年に一度夏になると家族揃って帰省してきた。


子供たちと孫たちを引き連れて各家庭10人以上で、弟妹間で被らないように日程を調節しながら夏の間入れ替わり立ち替わり一斉にやってくる。


山の上で涼しいし、ちょっとした別荘感覚なんだろうと思う。


でもその為に義父は事故があっては大変だからと、一年を通してメンテナンスに通っていた。


夫も週末ごとにその手伝いをしていた。


泊まりに来る前などは義母と共に私も行って、布団を干したりシーツを用意したり、食材を揃えたり準備が大変だった。



ある時義母が土間に落ちて大怪我をした。当時70になったばかりだった。


落ち方が悪かったみたいで、その時の怪我が元で寝たきりになって、2年ぐらいで亡くなった。


そのお葬式の時に義父がみんなの前で、そろそろあの家を片付けたいと申し出たんだけど、弟妹たちが一斉に反発した。


あの家で夏を過ごすのは私たち一族の恒例行事で、子供たちも楽しみにしている。片付けるなんてご先祖様に顔向けできない。管理していくのが相続した長男の義務だろう。と。


そのまま私にも口撃が向いた。


大体嫁がそばにいながらあんな大怪我させて一体どう思っているのだ。と。


言い訳と思われるかも知れないけど、あんな大きな家でずっと二人一組で行動するわけじゃない。


それでも義母がやってた仕事を私がやってあげればって後悔して後悔して私だって悔やんでたよ。


でもあんたたちはいつも楽しむだけ楽しんで、片付けもせずに、お礼も言わずにしれっと帰って行ったくせに。


結局人が良くて気の小さい義父はメンテナンスに再び通い始めたけど(義父の世代って“長男の義務”って言葉に弱いんだなぁ)


義母が亡くなってから明らかに気力が無くなって体調を崩し、一年で後を追うように亡くなった。



義父のお葬式の時、「今後はあんたたち(私たち夫婦)が役目を引き継ぐんだよ」と言われた。


すでに亡くなった叔父の息子、つまり旦那の従弟にそう言われた時、旦那は「いや、あそこはもう取り壊す」と言い切った。


その瞬間、旦那に向けられた数々の罵声。


しかし旦那はひるむことなく、「おまえらに利用されるのは親父の代で終いだ。今までは親父の思いを汲んで手伝ってたけど、どうしてもあそこで夏を過ごしたいなら買い取れ」って。


で、買取期限を示したけど、ただの一人も連絡寄越してくることはなく、まあ想定通りだったけど、予定通り家は取り壊した。


やつらにとっての“往復のガソリン代だけで過ごせる無料の宿”はそれで終わり。



先日「ポツンと一軒家」を見てて、義父と同じように親戚たちが集まる場所として高齢ながらメンテナンスに通っている男性のことを美談のように扱っていたのを見て、あの頃のことを思い出してモヤモヤしたので吐き出し。


ちなみにその後の義父母の法事には、弟妹(現在は2人だけ)しか来ない。


それぞれの伴侶や子供たち(夫のいとこ達)はあんなに義父母に世話になったくせに来ない。


家を取り壊したことを未だに恨んでるらしい。


義母の方の親戚はみんな顔をだしてくれるが。