うちの母親と父方の祖母が仲が悪くて、
顔が母親そっくりの俺もわかりやすく嫌われてた。

けど親父はエネ夫ってやつで祖母の暴言なんかを
「おふくろに悪気はない。」とか
「本当はお前(俺)を愛してる。
表現が上手く出来ないだけ。」と言い張る。

俺が小学2年の時母親が病気でぶっ倒れて、
「学校終わったらばあちゃん家に行け。
あとで迎えに行く。
ばあちゃん家には伝えてるから。」と言われて
しぶしぶ祖母の家に行く事になった。

着くと暴言の嵐。
「ほんとに来やがった!図々しい!」
「財布や通帳隠さなきゃ!
あの女の子供だから泥棒するに決まってるからね!」
なんかね。

ちょっとの間の我慢だから…。と何も言わずにいたら
その態度が気に入らなかったらしく
無理やり車に乗せられ出発。
どれぐらい走ったのかわからんが
気付けば山道に入ってて
お察しの通り俺はそこで放り出され
置き去られてしまった。

しばらくはその場を動かずにいたんだけど
誰も通らないから仕方なく
車が来た方向に戻って行く事にした。

最初はなんとなく遠足気分で余裕があったんだけど
だんだん日が落ち出すとめっちゃ怖いw
割と木が生い茂ってるから肌寒くもなってきて、
その頃には俺号泣w
だれかぁぁぁぁ!!だずげでぇぇぇぇ!!
と叫ぶけど誰も通らない。

疲れてもう歩けないし
子供ながらに死を覚悟しだしたところで
遠くから微かに車の音が聞こえた。
気のせいかもしれないけど
俺は必死に音のするほうに歩きながら
助けて!助けて!って叫んだ。
車のライトが見えると俺は必死に手を振った。

車は止まってくれて降りてきた人達が
「ほんとに人いたよ…。」とか
「なんでこんなところに子供?」なんかを言いつつ
俺を車に乗せてってくれた。

着いたのはめっちゃでっかい家。
車に乗せてくれたじいちゃんが
「なんかジュース飲ませてやってくれ!」と言うと
女の人がオレンジジュース持ってきてくれて、
俺はそれを泣きながら飲んで、
女の人は涙と鼻水でどろどろの俺の顔を
タオルで拭いてくれた。

じいちゃんが
「なんであんなとこに1人でいたんだ?」
と聞いてきたんで俺は事情を話した。
「子供になんて事を!」って
顔を真っ赤にしながら怒ってた。

じいちゃんが女の人に
警察に連絡しろって言ってたから
俺はランドセルに入ってる緊急連絡カード
(親の携番と家電、住所が書いてあるカード)
を渡してここに電話させてと頼んだ。

女の人は警察とうちに電話してくれて、
親父の声を聞いて安心のあまり漏らした。
ごめんじいちゃん。

親父が迎えに来たり警察も来たりして大騒ぎだった。
じいちゃんが親父に
「母親を大事にするのは結構だが
しっかり目の前の事を見ろ!
危うくお前の子供死ぬとこだったんだぞ!」
って怒ってくれて、
流石の親父も俺を置き去りにしてった
祖母の事を謝ってくれた。
その後は母親の手術終わってから離婚した。

あとからわかったけど
あのじいちゃんヤクザの会長だったらしい。
女の人(じいちゃんの嫁さんだったらしい)が
何度も声が聞こえる気がするって言ってたらしくて
半信半疑で行ってみたら…って事だったそう。

高校くらいになってから教えられたけど、
離婚と慰謝料養育費を一括で払って親権を放棄して
二度とこっちに接触して来ないなら
被害届出さないって言ったら親父はそれを飲んだってさ。

母親には黙ってるけど
俺が大学2年の時にどうやって調べたのか父親が会いに来て、
「ばあちゃんが入院してるからちょっと援助してくれ。
それか彼女でもいるんなら手伝いに来させてくれ。」
って言いに来た。

どこまでも母親が1番大事なんだなーと呆れると同時に、
あの時親父を捨てた母親の判断は
間違ってなかったんだなと実感した。