ちょっと前に居た職場の話。
最初の上司がゆるくていい雰囲気をつくっていて、
最年長の女性のパートさんが包容力がある人で何でも相談でき、
上司が採用したパートやバイトも真面目で優しい人達が多かったのとで、
職場環境が天国みたいだった。

学生バイトしていた子達が卒業とともに就職しにくるくらい楽しい職場だった。
旦那の転勤等で仕方なく辞めたパート主婦達は季節のたびに職場に何かを送ってくれたり、
個人同士のやり取りだけではなく職場全体が仲良かった。

ある日社員の一人が倒れた。
ちょっと前から様子がおかしくて心配されていた人だった。

祖母と二人暮らしの男性社員で、
祖母が要介護状態になり、頼れる親戚がなく、
奨学金の返済などでお金が足りなくて機関に頼ることもできず、
ほとんど寝ずに介護をしていたらしい。

休憩室で目を覚ました男性社員から話を聞き出した上司と先輩の行動は早かった。
詳しいことはわからないけど、格安の福祉やら市のサービス?やらと色々調べあげ、
体調不良の男性社員にかわり動いていた。

おかげで前より大分休めるようになったらしく、男性社員に笑顔が戻った。
サービスの充実のおかげで負担は少なくなったけれど、
仕事と介護の両立は厳しくて、休憩時間過ぎても眠っていたり、仕事のミスが増えたり、
服が汚れていたり、お風呂に入れなかったのか少し匂うときもあった。

でも誰一人陰口を叩くこともなく、全員が男性社員のミスを自然にフォローしていた。
有休は男性社員最優先だとか、体力使う仕事を回さないとかしていたけど、
気遣い過ぎるのも本人の負担になるだろうと、
本人の前ではいつも通りのホンワカした職場のまま。

先輩の仕事の振りが上手くて、業績が減るなんてことは無かったし、上手く回っていた。

そんなある日仕事の関係で上司が変わることに。
送別会では皆が泣いた。
上司も「俺、愛されてるなぁ」って涙ぐんでた。

歓迎会で新しい上司と話していたとき、何となく嫌悪感を感じた。
新しい上司に失礼だと思って笑顔は崩さなかったけど。
その嫌悪感は虫の知らせとか、無意識の警報だったんだと思う。

新しい上司は屑だった。
職場を俺仕様(ハーレム)に変えたいらしく、
古株のパートのおばちゃん達や好みじゃない学生バイト、
男子学生バイト達のシフトを極端に少なくし、いちゃもんをつけ、毎日怒鳴り散らし続けていた。
先輩が理路整然とした口調で止めに入ると、ふてくされてその場ではやめる。
でも先輩が居ないときに理不尽に怒鳴り付けられ、シフト時間を減らされ辞める人が続出。


そして新しい上司は好みの女の子だけを採用。
見た目も年齢も学校も完全に統一されていた。
何人かは後ろ姿だけだと見分けが付かなかった。

結局先輩もパート時間を減らされ、
まだ仕事を覚えていない新人と30時間以上の差をつけられていた。

パワハラ先は男性社員にも向かった。
職場全体が男性社員を守るように動いていたことに嫉妬していたんだろうなと思う。
物凄い食って掛かりようだった。

そして新しく入ってきた上司好みの子達は中々仕事を覚えられなかった。
古株の退職とシフト時間減少により、覚える時間が足りなかったからと、
機嫌が悪いと些細なミスでも怒鳴り散らす上司に怯えて萎縮したんだと思う。
中には怒鳴られたくなくて自分のミスを隠す子もいた。

新しい上司が特定の学校の生徒に拘ったせいで、
試験日前は一斉に休みを取る。
できれば長期いてほしいのに、高3の子を入れるなどをしたせいで、
古株のパートさん達は疲れはてていた。

上司はお気に入りの子に「今度○○ちゃんの制服姿見たいなあ」とでれでれしていた。
子どもいるアラフォーのおっさんが、
自分の子でもおかしくない年齢の子を露骨に性の対象にする姿はおぞましかった。
自分の子と数歳しか違わないのに。

私は年が近いせいか、気に入られている子達によく愚痴や相談をされていた。
「上司に触られたくない(性的な箇所ではないらしいが)」
「アドレスを聞き出そうとしつこい」
「距離が近くて息が…(臭いらしい)」
「気持ち悪い」
「車で送ろうとしてくる」
「性を匂わす質問をされた」
「キモい笑顔で○○ちゃんはピュアだねと言われた」

上司のお気に入りの子達はセクハラ入った依怙贔屓を嫌がり、
全員が上司を気持ち悪がり、嫌っていた。

お気に入りの子の一人が、弁護士志望の彼氏(彼氏の親も弁護士)に相談し、
大事にしてくれたおかげで、上司は別の職場に回されていった。

一応送別会は開かれたが、お気に入りの子達はほとんどが参加しなかった。
送別会自体集まりが悪く、社員数名、古株のパート数名、
上司に無理矢理幹事に指名され逃げられなかったお気に入りの子の一人だけ。

場所は居酒屋で、上司の指定は鍋料理。
開始早々に上司はお玉を奪い、箸でつついていたらしい。
幹事にされた子(未成年)は一切飲み食いせず、
パート二人に挟んで守ってもらったらしい。

未成年がいるし…とのことで送別会が早めに終了し、
上司以外の人達は二次会に、送別会に参加していない人達も二次会に参加。
私はお気に入りの子達と上司の陰口で散々盛り上がった。

上司が変わり、平穏が訪れた。
古株のパートさん達は本当は辞めたかったし、
上司に辞めるようにすすめられていたけど、
自分達が辞めたら男性社員が標的にされ、
最悪なこと(自殺とかさ)が起きるんじゃないかと危惧していたらしい。

施設に空きができ祖母が入所することができてやっと自分一人の時間が持てた、
と男性社員に食事に誘われている。